ドラマ「日本沈没」を見ています。11月7日に放送された第4話で、沈没が始まってしまう関東から「4000万人を脱出させる」という話になったのですが、ふと「4000万人も他府県の避難所に入れるだろうか?」と気になったんですよ。まあ、ドラマはドラマとして、実情としてどんなものかと調べてみたら、いろんなことが発覚。いろいろ地方自治体の防災対策がかいまみえて興味深い結果になりました!
「避難所」ではなく「避難場所」の収容人数しかない実情
まずは政府系のホームページから「避難所」のデータを探すことにしました。防災白書に「指定緊急避難場所の指定状況」という図があり、「避難場所」の想定収容人数が書かれていました。またその出典が消防庁「地方防災行政の現況」であることもわかりました。ふむふむ。
じゃあ「避難所」の想定収容人数はどこにあるのかな?と思って読んでみても、どこにもない。
「そもそも「避難所」と「避難場所」は違うの?」と疑問に思われたあなた!そう、違うんです。
ざっくり区別すると「泊まれる」か「泊まれないか」。「避難所」の想定収容人数の話の前に、先に「避難所」と「避難場所」の違いについて見ておきましょう。
「避難所」と「避難場所」の違い
「避難所」や「避難場所」というと「災害時に逃げる場所」「そこに行けば安心」というイメージがありませんか?
実際、地震の揺れによる被害だけならどちらに逃げ込んでもいい気がしますが、津波被害の場合にはそうもいかなかったんです。
「避難所」
「避難所」は災害で家が壊れた人などが身を寄せて、しばらく滞在できる場所のことを言います。小学校や体育館、公民館など。屋根があって寝泊りできる、ざっくりいうと「泊まれる場所」です。
住所地で指定避難所が割り振られるので、家の近くにあることが多い。ここが重要なポイント。
「避難場所」
「避難場所」は災害の危険からとりあえず逃げるための場所です。たとえば火事や津波が襲ってきたときに、とりあえず大きな公園に逃げる。そこで火事や津波がおさまるのを待つというような場所。
なので屋内施設以外にも、屋根がない公園や運動場、大学のグラウンドなど屋外施設も含まれます。ざっくりいうと「泊まれない場所」。家の近くだけでなく、いろんな場所が指定されます。
「避難所」と「避難場所」の区別を明確化
東日本大震災前は「避難所」と「避難場所」の違いがしっかり区別されていなかったようです。市町村の広報や避難誘導板の案内もふわふわ。
そんな中、東日本大震災がやってきました。「地震が来た」「津波が来るらしい」「じゃあ『避難所』に行こう」と、家の近くの「避難所」に避難した人たちが津波に飲まれてしまいました。
「ここなら安心!」とやっとたどりついた避難所で津波に遭われた方たちが、どれほど恐ろしかったかと思うと胸が痛みます。怖かったでしょうね。
東日本大震災後に改正された「災害対策基本法」の中では、市町村長は「避難場所」と「避難所」をはっきり区別して指定し、住民に知らせること、と定められました。
地震で建物が倒壊しそうなら「〇〇避難場所」へ、津波が来るかもしれないなら「△△避難場所」へ。というように、災害の種類によって場所が異なる場合もあります。
家の近くの「避難所」が安全ではない場合もあるので、ぜひ皆さんも住んでいる地域の「避難所」と「避難場所」を確認してみてくださいね。
「避難所」と「避難場所」のちゃんとした定義についてはこちら
「避難所」の想定収容人数が掲載されない理由
話は戻って、防災白書に「避難所」の想定収容人数が掲載されていない理由です。出典の消防庁「地方防災行政の現況」にも記載はありませんでした。
なぜ掲載されていないのか?
理由は意外と簡単にわかりました。防災白書91ページを一部引用しますね。
(令和3年版 防災白書 91ページ)
なるほど。つまり、
まだ「避難所」の指定を終えていない市町村がある。
だから
まだ全国の「避難所」の想定収容人数がわからない。
ということのようです。
マジか……。もう東日本大震災から10年経つというのに……。
いや、きっとこれは「もっと「避難所」が増やせるはず!」と市町村がいろいろ交渉してがんばってるだけなんだ。ポジティブな意味でいつまで経っても数が確定しないんだ。と信じたい。そうであってほしい……。
「避難場所」の住民収容率を計算してみた!
うちひしがれていても仕方ないので、せっかくだから数がわかっている屋外・屋内含む「避難場所」の住民収容率を計算してみました。
「避難場所」の想定収容人数は消防庁「地方防災行政の現況(令和3年3月版)」から。人口については、最初国勢調査を使ってたんですけどちょっと古いので(最新が平成27年)、総務省統計局「日本の統計」から令和元年推計人口を利用しました。
47都道府県「避難場所」住民収容率一覧
まずはベーシックに47都道府県の「避難場所」住民収容率一覧です。見にくい。「避難場所」は地震、津波以外にも、洪水や高潮、火事など災害別で指定されているのですが、煩雑になるので今回は「地震」「津波」だけにしぼりました。図はそれぞれクリックすると拡大されます。
住民収容率 ワースト10
こちらは収容率が低い自治体をピックアップ。ワースト10で表にしてみました。
地震「避難場所」住民収容率 ワースト10
津波「避難場所」住民収容率 ワースト10
どちらも東京・大阪は安定のワースト入り。そんな気はしてた。まあ、人口が多いから仕方ない。
しかし神奈川と静岡は収容率低すぎじゃないですか!?
計算かデータが間違ってるのかと何回か確認しましたよ。そして間違ってなかったのでもう一度驚き。先ほどもお話しましたが、「避難場所」は屋外も含むんですよ?公園もグラウンドも使ってこの収容率。いやでも東海地震に備えてるんだしねぇ……。きっとなにか事情があると信じたい。
奈良県と岐阜県の津波「避難場所」住民収容率が低いのですが、むしろ海がないのに津波に備えている両県よ!すごいな!山津波に備えてるのかな……。栃木県,山梨県,埼玉県,長野県,群馬県,滋賀県のいわゆる海なし県は回答なし。うむ、そりゃ仕方ない。
人口上位10都道府県の「避難場所」住民収容率
こちらは人口が多い上位10都道府県の住民収容率をピックアップしました。
総じて北海道・千葉・兵庫の住民収容率が高い。愛知の津波「避難場所」住民収容率が地震「避難場所」に比べて急激に減るのは「避難場所」が沿岸部にあるからなのかな?むしろ地震にがんばって備えてるから相対的に下がって見えるのか。
「流動人口」を含まない「避難場所」住民収容率
以上、「避難場所」の住民収容率を計算してみた!でした。
個人的にはいろんなことがわかって興味深かったですし、計算してみてよかった。
ただ一つ気になるのが、利用している「人口」が「常住人口」、つまり住んでいる人の人口で、通勤・通学や観光客を含んでいないことです。
東京、大阪、神奈川など大都市は通勤・通学、観光客も多いので、昼に災害があった場合、さらに「避難場所」の住民収容率が下がります。滞在できる「避難所」になればさらに下がるでしょう。付近の住民は在宅避難を余儀なくされるかもしれない……。
まあでも、これも令和元年時点の数値を使ってますからね!
もしかしたら、ひょっとしたら、奇跡が起これば、来年になったら「避難所」も「避難場所」も倍増してるかもしれないし!
淡い期待と防災備蓄を胸に祈りましょう(-人-)(←信用してない
では皆さん、今日もよい一日!
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